高知家庭裁判所 昭和54年(少)1094号 決定 1980年4月10日
少年 S・N(昭四一・九・四生)
主文
少年に対し強制的措置をとることを許可しない。
理由
一 本少年は、家出、窃盗(触法)行為が繰り返されたため、昭和五二年一二月二四日高知県立教護院希望ケ丘学園に入園したが、その後も、送致書中「審判に付すべき事由」欄記載のとおりの無断外出、窃盗(触法)行為が頻回にわたり繰り返されるため、昭和五四年九月一三日高知県立中央児童相談所長から、強制的措置のとれる国立教護院での処遇が相当であるとして、本件強制措置請求がなされたものである。
二 ところが、当裁判所における調査審判の結果とりわけ精神科医師である当庁技官の診察の結果によると、少年の上記のような行動は、てんかんもしくは脳炎等の器質的障害が主な要因となつている疑いが強くもたれ、国立教護院における訓練や強制的措置よりもむしろ精神医学的な診察、治療を先行させるべきものと判断されたので、当裁判所は少年を試験観察に付したうえ、保護者、児童相談所等の同意協力を得、なお少年自身も納得のうえ、前記当庁技官が勤務する病院に入院せしめて、診察治療を継続することとした。
三 上記入院治療の結果、少年の異常発作や幼覚様体験等の症状は、時期により変動がみられたものの全体として軽快に向かい、このため児童相談所および県立教護院の側においても、少年を再度同院にひきとつて保護を継続したいとの意向が積極的に示されるに至つた。そして同院への帰院後も、適宜前記病院に少年を通院治療せしめる等の措置も関係者の間で予定されており、これら諸事情に照すと、現段階では、少年に対する強制措置は不必要と判断される。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判官 西村則夫)
〔参考一〕送致書<省略>
〔参考二〕意見書<省略>
〔参考三〕鑑別結果通知書<省略>